心の旅 地図を描く
さして広くも無い我が家の中、せっせと毎日行われる恒例行事があります。
おそらくはどこのご家庭でも、愛猫さん達がやってくれているであろう事…
オス猫である八朔は、日に何度かの家中の見回りを欠かしません。
そして、見張り台から見渡せる外の世界への警戒だって忘れない。
「この家はボクが守ります」
とでも言いたげな行動は、見ていてとても微笑ましい様な、少しだけ頼もしい様な(笑)
そのくせ、少しでも大きな音がしたり、不穏な気配があれば、見事なヘタレ腰になるのはご愛嬌♪
女の子の小夏は、日々家中の角と言う角に、スリスリ匂い付けに余念がありません。
あっちも、こっちも、そっちも、どっちも「アタシの匂い!」
あのぉ…それって痛くないですか?
と聞きたくなる程、せっせと「小顔エステ」ゴシゴシに励んでおられます(笑)
猫さんのテリトリーの確認作業…と言うヤツですよね。
そんなに毎日やらんでも、変わりはないって。。。とも思うのですが(笑)
この子達にとって、それはとても大切なお約束です。

とある書物の中に、とても心惹かれる一文を見つけました。
「誰もが生まれたその日から 自分だけの地図を描き始める」
よく「物語」を綴り始めると言う言葉は聞きますが、地図を描く…と言う言葉にハッと致しました。
これは何も本当の物理的な距離を測っての地図ではないはずです。
ただの平面の地図でも、きっとない…
八朔や小夏は、おそらく生まれた場所から、あのお社へ連れてこられ、その後多少の移動はあったとしても、実際の距離は然程のものでは無かったと思います。
その後、masatosiさんのお宅や、我が家へやってきた兄妹は、それからと言うもの病院以外の外出は皆無です。
その我が家とて、豪邸とは程遠い小さな小さな部屋…
そんな中で暮らしている事になります。
八朔がいくら毎日テリトリーの見回りに余念がなくても、その「守る場所」は本当に狭い範囲でしかない。
ですから物理的な平面地図で言えば、茶トラーズが描き出せる地図はきっと小さな狭いものでしかないと思います。
でも…もしそれが「心の地図」だとしたら…?
母猫さんと過ごせた日々。
小夏と八朔の2匹だけになって過ごしたお社での日々。
そして、離れ離れになってしまった時間。
その全てが折り重なって、この子達だけの地図が描かれるとしたら、きっとそれはとても様々な色合いに満ちた複雑な模様になる気が致します。
今こうやって、兄妹が穏やかに過ごしている日々も、実は毎日が違っているはずです。
同じ場所で、同じような時間を過ごしていても、聞こえて来る音、感じる風の匂い、とーさんやかーさんとの関わり…
全てが「昨日」とは違う「今日」です。
それはきっと…日めくりカレンダーを一枚めくって、そのまま敷き詰めた様な、僅かな重なりの日々…
その一枚分の重なりが、10日になり1か月になり…1年になり3年になり…
丁寧に折り重ねたパイ生地の様な、幾重にも梳き流した和紙の様な…
同じ様でいて決して同じではない時間が織りなす、この子達だけの模様を描き出しているはず。
きっと些細な模様の中には、八朔が拗ねた日の事や、小夏がとーさんの膝に自ら乗って行った日の模様も含まれているのですよね。
それは、この子達が何キロもの道のりを走ると同じだけ、心の中での旅だったと思います。
一枚一枚…一日一日…そうやって積み重ねて描いた地図は、この子達の心の深さ。
薄紙一枚分ずつ近付いて行った、かーさん達との距離。
八朔にしか、小夏にしか描けなかった「心の地図」です。

東京生まれで東京育ちのとーさんは、よく「故郷が無い」と言います。
かーさんと訪れた田舎の景色や、かーさんが話すその土地の風景を羨ましいと…
もしも、懐かしさや帰りたい場所を故郷と呼ぶのであれば、とーさんには確かにそれがないのかもしれません。
でも、とーさんにも折り重ねた日々の心の地図がある。
それが、少しばかり寂しい「独りだけ」の地図の日々が続いたとしても…です。
間違いなくそれが今のとーさんを作り上げたのなら、かーさんはその地図を隅から隅まで読み解きたいと思いますよ。
(例え少々オタクで変人の記録であっても…笑)
ついでに安心なさい!
帰りたい場所が故郷であるなら、それにはかーさんがなってやろうじゃないですか(笑)
かーさんの地図と、とーさんの地図の端っこ同士をくっ付けて、少しばかり地図も拡大しちゃいましょう♪
そして…そんな二人の地図の上に、八朔と小夏を大切に乗っけて暮らしましょう。
きっと地図の上には、可愛い肉球の足跡が一杯付きますね(笑)
心一杯にそんな地図を描いて行く事が、かーさんの何よりもの願いです。



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心からの深謝を♪
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